チェーンソー、選ぶならバッテリーかエンジンか?
庭木の剪定伐採、薪の玉切りなどなど。
「木を伐る」のが必要になった時に、誰もが思いつくのがチェーンソーではないでしょうか。
ポピュラーな動力源といえばエンジン式ですが、昨今ではバッテリー式(充電式)の性能も上がり、選択肢も豊富です。
エンジンチェーンソーとバッテリーチェーンソー、それぞれのメリットを洗い出してみましょう。
エンジンチェーンソーのメリット
①パワーがある
同じ出力のもので比べると、結果的にエンジン式の方が切断能力が高いです。
例えばマキタのバッテリー式「MUC019」は「42mlエンジン同等の出力」を謳っていますが、スチールのエンジン式「MS241C-M」ほどの切断能力はありませんでした。
現場での使用レポートはこちら
これはバッテリー式の宿命ですが、電気製品は回路を守るために出力の制限をかけざるをえません。
よって、伐っている最中に「あと一歩!」というところで粘ってくれるエンジン式に対し、バッテリー式は止まってしまうこと多々です。
というわけで「マキタの言うことは嘘」というわけではなく、「バッテリー式でも伐れるけどスムースにはいかない」と言うのが正しいでしょう。
②燃料が少なくすむ
同じ太さの木を同じ回数伐って比べた場合、沢山のバッテリーを消費するのに対し、エンジン式のほうが少ない量の混合油で済みます。
これはどういう場合に有利かというと、例えば
駐車場所から1時間以上歩かないと着かないような、人里離れた作業場所
を想像してみましょう。
そこで沢山の太い木を伐るとなったら?
私なら間違いなくエンジン式を選びます。
なぜなら、そこそこの量の混合油を担ぐだけで済むからです。
それに対してバッテリー式だと、重いバッテリーを沢山担いでいかなければなりません・・・。
そう、エンジン式のほうがより軽く少ない燃料で同等の作業量をこなせるのです。
③燃料が安い
一般的にバッテリーというものは高価です。
馴染みのあるものだとスマホの予備バッテリーでしょうか。
小さなものでも結構なお値段がしますよね。
バッテリーチェーンソーのそれも、スマホ等と同じリチウムイオン電池なのです。
スマホのそれよりも断然大きいわけですから、高いですよ。
写真左のマキタ40V2.5Ahバッテリー、右の18V6.0Ah、どちらも定価24,400円です。
このバッテリー1個ぶんの仕事量をこなすのに、混合油ならば1ℓも使用しません。
すなわち、仕事量は
2万円以上のバッテリー=数百円程度の混合油
ということです。
なんて書くと「バッテリーなんて全然ダメ!」という印象ですが、バッテリーは何回も使えるというのを見逃してはいけません。
じゃあどっちやねん!と言われると困るのが正直なところですが、一般的には混合油の方が安いと言えるでしょう。
④軽い
本体や燃料を含めた総重量は、一般的にエンジン式の方が軽いです。
「バッテリー式は軽いんでしょ?」と思う方も多いようですが、それは量販店に売っている低出力機の印象ではないでしょうか。
実際のところは、同じ出力で比較するとバッテリー式のほうが重くなりがちです。
特に高出力機になってくるとその差は大きくなる傾向です。
バッテリーチェーンソーのメリット
①騒音が小さい
バッテリー式の駆動音が静かというわけではありませんが、エンジン式のやかましさとは比較になりません。
そしてエンジン式を使う際は、騒音から自分の耳を保護するためにイヤーマフ(もしくは耳栓)を使わなければなりません。
夏のイヤーマフは暑くて辛いですよ~。
さらに言えば、騒音にイヤーマフとなれば周囲の音や声は聞こえません。
これは「チェーンソーを使う」という危険作業、特に複数人がいる作業場所では重大なリスクです。
薪用の木を伐るお父さんのそばに小さなお子さんが近づいてきて・・・なんて状況を想像するとゾッとします。
イヤーマフが不要なぶん、周囲の状況把握がしやすく他者とのコミュニケーションが取りやすい、というのも低騒音の大きなメリットです。
ただし、静かなぶん起動しているかどうかの確認がしづらいのが事故に繋がる可能性もあります。
「起動していない」と思い込んで誤ってスロットルを握ってしまわないように!
②振動が少ない
エンジンの振動は人体に悪影響です。
長時間の使用によって手の循環、神経、骨や関節に障害を受けてしまうことがあります。
バッテリー式でも振動はありますが、エンジン式に比べて断然少ないです。
③排気ガス無し
これもバッテリー式のメリットです。
ただ、個人的には「バッテリーはエコ」というのは疑問です。
マキタも「みんなでつくる脱炭素社会」と謳っていますが、バッテリーの製造過程や使用済みバッテリーの廃棄処理においてはどうなのでしょうか。
そもそもバッテリーに充電するための電気自体をつくる過程全てがクリーンエネルギーというわけにもいかないでしょう。
何はともあれ、使用者の健康を害する排気ガスが皆無なのは、バッテリー式の強みです。
④起動が簡単
電源ボタンをポンと押すだけ。こんなラクなことはありません。
そして「起動しない」というトラブルの可能性がめっぽう低いことも魅力です。
エンジン式のスターターロープを引くことのしんどさは、辛い時ほど身に沁みますよね。
暑い日に疲れた体で、引けども引けども起動しないなんて時は、それはもう・・・。
⑤メンテナンスが簡単
エンジン式だと、エアクリーナーやプラグなどの掃除が必須ですが、バッテリー式はガイドバー周辺の切り屑掃除と刃を研ぐだけで済みます。
「エンジンの音がいいし、いじるのが楽しいんだよ~」という人もいますが、やはりエンジンものを扱うこと自体、一般的には敷居が高い行為でしょう。
⑥バッテリーならではの扱いやすさ
ガソリンの匂いが好きで好きでたまらなくって、それでご飯が食べれます!なんて人はいないと思います(笑)
臭くない、汚れないのは嬉しいですよね。
混合油をつくる必要が無く、家で簡単に充電できるのもメリットです。
混合油をつくるのは意外と手間がかかります。
ガソリンスタンドで署名して購入して、エンジンオイルと混ぜて・・・なんて手間は無いほうがいいですよね。
他にも、
・混合油と違って安全に長期保管できる
・防水バッテリーなら、雨天でも交換しやすい(混合油だと補給時に雨水が入ってしまう)
というバッテリーならではのメリットがあります。
⑦バッテリーが使いまわせる
同じメーカーであればチェーンソーだけではなく、ドライバードリルや丸ノコなどの様々な工具にバッテリーが使いまわせます。
ライトや掃除機、クーラーボックスなどもありますから、DIYだけではなく日常生活、アウトドア、防災用品としても利用できます。
これなら「バッテリーは高い」というデメリットも覆せるのではないでしょうか。
まとめ:こんな場合は●●式チェーンソーがおすすめ
以上をふまえて各チェーンソーが、どんな人や状況に合っているのかまとめてみましょう。
(エンジン式がおすすめ)
・太い木を沢山伐る
・使用頻度が高い
・車で入れない遠めの場所で作業する
・街中では使用しない
・エンジンやガソリンの取り扱いに慣れている
(バッテリー式チェーンソーがおすすめ)
・細めの木を伐ることが多く、作業量は少ない
・使用頻度が低い
・街中で使用することが多い
・エンジンなど機械の扱いが苦手
・チェーンソーと同じメーカーのバッテリー式工具を持っている
どんな道具もメリットデメリットがあって当然。
そこを理解してうまく使えば「適した道具」になってくれます。
ここまで読んでいただいた皆さまが、ご自分に適したチェーンソーを選ばれることをお祈りしております!
記:稲垣
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